
秋分の日より、秋季限定の切り絵御朱印をお分かちしています。
今回の題材は、幕末の思想家・佐久間象山先生。
嘉永七年(1854)に、当社の七反幟へ揮毫を寄せていただいたご縁によるものです。
■ 象山先生と蚊里田八幡宮のご縁
象山先生は、長野市松代出身の学者・思想家として知られ、西洋の科学技術を早くから学び、日本の近代化を見通した人物です。
その洞察力や柔軟な思考から、「近代日本の夜明けを見通した知の人」とも称されています。
嘉永七年、当地区出身で象山先生の門弟だった花岡復斎氏の仲介により、先生は当社の七反幟に「威稜扶宇宙(いりょううちゅうをたすけ)/恩眷煦生霊(おんけんせいれいをくす)」の文字を揮毫されました。
「八幡大神の御威光によって宇宙は安定し、その恵みがあまねく生きとし生けるものに行き渡る」という意味が込められています。
筆の代わりに箒を用い、直接布地に書かれたと伝わるその幟は、箒と共に今も大切に伝えられています。
当社の春季例祭では傷み始めている象山先生の幟の代わりに、門弟の復斎氏による模写を掲げ、象山先生の志を偲んでいます。
■ デザインに込めた思い
今回の切り絵御朱印では、象山先生を囲むように曼珠沙華と紅葉があしらわれています。
秋彼岸の頃、境内を彩る真紅の曼珠沙華。そして、秋風に色づくモミジ。
それらの中で舞う二羽のフクロウは、象山先生の幼少期のあだ名「テテツポウ(フクロウの方言)」にちなみ、先生の知恵と先見の明を象徴しています。
フクロウは古くから「不苦労」「福来郎」とも書かれ、知恵・長寿・金運・魔除けなどの象徴として親しまれてきました。
夜の闇でもしっかりと見通すその眼差しは、未来を見据える心のあり方を思わせます。
「先を見通し、学びを怠らず、時代を照らす知の光を大切にしたい」──
そんな願いを、この秋の御朱印に託しました。
■ 切り絵ならではの表現
A5サイズの切り絵御朱印は、グラデーションカラーで仕上げられています。
光に透かすと、曼珠沙華や紅葉が柔らかく浮かび上がり、まるで秋の夕暮れに包まれているような印象を与えます。
切り絵ならではの陰影の美しさ、そして細やかな職人技が、秋の静けさと知の深さを感じさせてくれます。
■ おわりに
象山先生が筆を執られたのは、当時43歳のとき。今からおよそ170年前のことです。箒を筆に代えて書かれた幟の文字も、時を越えてなお、力強い気を放っています。
この切り絵御朱印を通じて、象山先生の精神に少しでも触れ、秋の境内で静かに思索をめぐらせていただければ幸いです。
※秋季切り絵御朱印は、蚊里田八幡宮授与所およびオンライン授与所にて頒布しています(数に限りがございます)。
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