紙垂(しで)の話

神社の境内で数多く見かける和紙の切飾りがあります。これを紙垂(しで)といいます。“しだれ”を語源として、単に「垂」とか「四手」や「四垂」とも表記する場合があります。

 

古くから幣帛(へいはく:神様にたてまつる礼物)として木棉(ゆふ)・麻・絹などが用いられてきました。木棉(ゆふ)は楮(こうぞ)の繊維で織った布または紙の古名で、比較的手に入れ易いものであったことから幣帛として最も広く用いられました。したがってこれを榊枝や串に付け、さまざまな形に切って垂らし、垂(しで)として用いることが多くなり、結果として神祭りに欠くことの出来ないものとなったのです。神にたてまつる神聖な礼物を象徴する垂(しで)は、しだいに変形・形式化され、現在のような形になりました。

 

今でも神前にたてまつられたり、清浄の目印として注連縄や玉串に付けられています。また、お祓いの時に用いる大麻(おおぬさ)もその一つの例になります。

 

紙垂の起源は『古事記』の天の岩屋(あまのいわや)隠れの神話に記されています。天照大御神が岩屋にお隠れになった際、神々がお出ましを願って行った祭りにおいて榊に楮(こうぞ)の白い幣帛と、麻の青い幣帛を垂れかけた、との記録がそうだとされています。

 

形の由来については主に以下の二つの説があります。

①「白い紙を交互に切り割くことにより無限の拡がりを表わす。それは即ち無限に拡がる御神威を紙によって象徴している」

②「注連縄の本体は雲を、〆の子(細く垂れ下がっている藁)は雨を、紙垂は稲妻・稲光を表わしている」

といったものです。稲の結実の時期に稲妻が多いことから、稲妻が稲の豊作をもたらすと考えられていました。ちなみに稲妻とは「光」のことを意味します。「音」のことは雷といい、そしてその語源は「神鳴り」だといわれています。

 

現在では紙製の紙垂が一般的になっていますが、紙片の断ち方と折り方にはいくつかの形式・流派があり、代表的な流派には、吉田家流、白川家流、伊勢流があります。また、垂の数も二垂、三垂、四垂、七垂、八垂などがあり、大きさも様々です。次に神社をお参りされる際には、形や大きさもポイントに紙垂のこともちょっと気にしてみてはいかがでしょうか。